パニック発作が起きてしまった時、呼吸が苦しくなることは少なくありません。パニック障害の方なら、経験がある方は多いのではないでしょうか。
激しい動悸とともに、息が上がってきてしまい、呼吸がしづらい。あまりの息苦しさに、このまま窒息するのではないかという恐怖に襲われます。
そんな発作が起こってしまった時、息が苦しい(過呼吸)状態の時には、どう呼吸するのが良いのでしょうか。そのヒントは、なぜ息苦しくなるのか理解することです。
パニック発作でなぜ息が苦しくなるのか
パニック発作に襲われると、強い不安や恐怖を感じてしまいます。そして呼吸が浅くなり、息が上がってきます。すると脳は、「もっとたくさん息を吸わなければいけない」と考えてしまうのです。
しかし実際には、この息苦しさは酸素が足りないわけではありません。パニック発作の不安感や恐怖感が原因で呼吸が浅くなっているだけなのです。そのため、いくら呼吸を増やしても改善されません。つまり、「もっとたくさん息を吸わなければいけない」というのは勘違いなのです。
それなのに症状が改善されないことに焦ってしまうと、さらに不安を呼び、どんどん呼吸が速くなっていく。その結果、より呼吸しづらくなり、息苦しさが増していく、という悪循環に陥ってしまうのです。
そのため、呼吸法の前に、基本的な心構えから抑えておくのが大切です。
心構え:パニック発作は必ずおさまる
抑えておくべき考え方は、「パニック発作は必ずおさまる」。これだけです。そう考えるだけで、不安を軽減して、発作を軽くすることが出来ます。
パニック発作であれば、その息苦しさは不安や恐怖が原因です。実際には、数十分もすれば必ずおさまるのです。
発作が起きても、不安になっても、大丈夫、大丈夫。そう思うことができれば、原因となっていた不安が緩和されて、少し呼吸が楽になっていくことでしょう。
息苦しい(過呼吸)時の呼吸法
必ずおさまるとわかっていても、まだ息苦しい。そんな状況の時は、呼吸法を意識してみましょう。まず最初は、姿勢を変えるだけでも楽になるかもしれません。
うつ伏せになる、もしくは前屈みになる
もし横になれるのであれば、仰向けではなくうつ伏せになってみましょう。椅子に座って前屈みになるのも良いでしょう。このような姿勢に変えるだけで、腹式呼吸になりやすいのです。
呼吸には胸式呼吸と腹式呼吸があります。息が上がっている状態は、胸式呼吸をしている場合が多いです。その場合、息を吐き切れていないまま、息を吸ってしまいがちなのです。と言っても、先ほど見た通り、酸素が足りていないわけではないのです。
むしろ息を吐いて落ち着かせていくことが大切。うつ伏せや前屈みになれば、息を吐きやすい腹式呼吸をしやすくなるのです。
吐く、吐く、吸う
呼吸法としては、ゆっくりと息を吐くのが良いです。吐く、吐く、吸う、くらいの感覚でいるのがおすすめです。吸う時の2倍くらい時間をかけて、ゆっくり息を吐くのです。発作が出た時にいきなり意識的に行うのは難しいかもしれません。この記事を読みながらでも、少し意識して練習しておくと良いでしょう。
意識としても、息を吸うことではなく、吐くことに意識を向けましょう。それにも意味があります。息を吸う時には交感神経が働いて興奮状態になるのに対して、息を吐く時には副交感神経が働いてリラックスさせる効果があるのです。詳しいメカニズムを理解する必要はありません。要は息を吐くことに意識を向けるだけで良いです。
息を吐く時に少し落ち着くような感覚が、実際に感じられる人もいるでしょう。「ほっとする」という表現もありますが、これも息を吐くことをイメージさせますよね。息を吐くことがリラックスに繋がり、不安が減ってメンタルを安定させるのです。そうすれば、自然と呼吸も落ち着いてくる、というわけです。
私自身、何度も発作に襲われていますが、徐々にこの感覚が掴めてきました。息を吐く時にこそ、心は落ち着いてくるのです。だから、ゆっくりゆっくり息を吐くようにすれば良いのです。
紙袋を使う方法はリスクが高い
息苦しい(過呼吸)状態というと、紙袋を使った方法(ペーパーバック法)がよく知られています。しかし、この方法はあまりおすすめできません。
どんな方法かというと、紙袋を口に当てて、その紙袋の中で呼吸することで落ち着かせる、というものです。自分が吐いた息の二酸化炭素を吸うことで、血液のバランスを整えることで落ち着かせる、というものです。
確かに息が上がると息を吸い過ぎているので、一見正しそうに感じます。実際にこの方法で落ち着くことが出来た、という方もいるでしょう。しかし現在では、リスクが高い方法なので避けるべきだとの意見が出てきているようです。
この紙袋を使った方法の主なリスクは2つです。
- 脳が酸素不足になってしまう
- もしパニック障害でない場合、致命的となる
先ほど説明した通り、紙袋の中で呼吸をする方法なのです。紙袋の中の酸素濃度は徐々に低下していき、足りていたはずの酸素が、この方法のせいで本当に酸素不足となるリスクがあるのです。実際にこの方法による死亡例さえ報告されているとのことです。
また、もしパニック障害とは別の病気が原因であった場合にも、大きなリスクがあります。何らかの別の病気が要因だった場合、過呼吸によってむしろ症状を抑えている可能性もあるのです。
初めての息苦しさを感じる。いつもとは違う感覚がする。そんな感覚があれば、パニック発作ではない可能性も疑いましょう。もちろんその場合は、必ずすぐに病院へ行き、医師へ相談してくださいね。
また、あなたがパニック障害の本人ではなく、そのご友人やご家族であれば、こちらの記事もぜひ参考にしてみて下さいね。
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